雑種犬肉球日記

雑種犬が書いたブログ。

なあみんなで「夢幻紳士」を読もうぜ

タイトルのまんまです。

「夢幻紳士」の何がそんなに面白いのかって?

禍々美しい怪奇編は、粋で艶っぽいエピソードが多いですし、少年探偵の魔実也君が登場するマンガ少年版は、 ちょっと不思議なお話があったり、昭和初期という時代設定からエログロナンセンスもあるけど、何たって少年ですから、あっけらかんと明るく事件を解決する訳です。

そして、何といっても冒険活劇編!

完全にギャグ漫画です。

冒険活劇編の魔実也君は、生活そのものが果たして存在するのか謎な怪奇編魔実也君とも、少なくともお母さんはいるらしいマンガ少年版魔実也君とも違って、おっとりした美人、でも賭け事には鬼神の如き強さを見せるお母さん、世界中を放浪していて女にだらしない、でもお母さんには弱いお父さん、お父さんの妹でゴージャスな美人、男に貢がせる手腕は超一流な叔母さんと、依頼を受けた事件がもとで知り合った、浅草の劇場でストリッパーをしていた可愛いガールフレンド、という具合に、家族や友人知人に囲まれて暮らしています。

ある時は敵役の老博士とその一味を向こうに回し、大立ち回りの大活躍を見せ、またある時は、旅行中事件に巻き込まれたお母さんを助けに大陸へ渡り、あるいは怪盗を相手に宝を守り、船旅に出れば必ず船が沈没してボートで脱出。ときには軍と、また暗黒街の大物と切った張ったの勝負をし、といった具合に、とにかく波乱万丈、ひたすら痛快なシリーズです。

魔実也君はお母さん似のかわいい少年で、潜入調査や追っ手から逃れるときなど、ちょいちょい変装のために女の子の格好をしますが違和感仕事しろ(笑)

それこそ何でもありの物語ですが、やっぱり昭和初期、大東亜戦争・第二次大戦前夜の日本という舞台設定だからこそできる離れ業ではないでしょうか。ここまでの大活劇は、やろうと思ってもせいぜい昭和30年代半ばくらいまでが限界だと思うんですよ。作者の高橋葉介先生がコミカライズした「帝都物語」のエピローグでは、空襲の跡も生々しい東京に“帝都の小鬼”怪奇編の魔実也君が登場しますが、あれがおそらく、彼が東京にあらわれた最後なんだろうなと、ぼんやり想像しています。

 

ちなみに、冒険活劇編で一番好きなエピソードは、ガールフレンドのアッコちゃんが徹夜でお弁当作って、魔実也君に届けようとするお話と、若い頃の猫叔母さんが満州で暴れ回るお話です。

魔実也君の叔母・猫さんカッコイイですよ。彼女は「おんなにうつつ抜かしながら仕事もできなくちゃ大物とはいえないわね」「ちょっとでもケチがついたら仕事もおとこも見切りをつけるの早いのよあたし」って云ってまして、ああ同じこと考えてる人がこんなところにいた! と感慨深かったです。

アッコちゃんのお弁当のお話は、蓋あけた瞬間の魔実也君の顔がもう、素でうれしそうなのが微笑ましいのね。料理苦手なおんなのこが、自分のために徹夜で頑張ったんだから、そりゃあうれしかろうよ。末長く爆発しろ‼︎(祝福)

 

高橋葉介先生の描かれる画は、ギャグタッチのものにも、どこか艶があってステキなのですが、知ってるという人になかなかめぐり逢わないので、どうか少しでも多くの人が「夢幻紳士」を読んでくれますように。