雑種犬肉球日記

雑種犬が書いたブログ。

愛情としつこさは紙一重ってホントそれ

ツイッター見ていたら、看護関係と思しき方のツイートがタイムラインに流れておりました。

結構な数、いるのだそうです。

「入院したときに世話になった看護師さんにお礼をしたい。住まいや連絡先を捜しております」というツイートを拡散して、強引に捜し出そうとする人が。

そりゃあね、心身共に弱っているとき、それも大病したり大怪我を負ったりで参っているときに、看護師さんにいたわられたり励まされたり、だらしない世迷い言など吐いて叱咤されたりすれば、文字通り白衣の天使に思われても仕方ないのは、人情として解ります。

でもさ。医師やナースの方からすれば、患者は一人ではないし、引き受けた患者の全てに、平等に、しかも手厚くケアし接する必要がある訳で、何も特別なことはない。皆、医療行為やそのサポートを職業として、知識と経験を礎とした自負でもって、仕事にあたっているのです。いってみればプロフェッショナルの誇りと自覚ですよ。それを、医師や看護師のプライベートな領域にまで踏み込んでいこうというのは、いくら感謝の意を伝えたいとしても、プロに対して甚だ失礼なのではないかと思います。

ありがとうとお礼を言いたいのなら、リターンアドレスを明記したハガキなり封書なりで病院あてに一筆書き、文面に「いつ、どんな病気や怪我でどのくらい入院/通院したのか」「担当の医師や看護師の名前」をしっかり入れて、ありがとうございます。おかげさまで今は健康です。と書けばいいんです。担当外の人で相手の名前が判らなければ、お医者様看護師の皆さんありがとう。で充分でしょう。昔、福祉系のバイトしていたことがありますが、そういうお手紙は、施設内の朝礼で読まれたり、皆が読めるように閲覧したりしてましたよ。個人を捜してどうこう、なんてネットでまどろっこしくやっているより、よほど確実に気持ちが伝わりますよ。

特定の個人を捜し出して、という辺りがもうダメ。

悪意を持って、いい加減なエピソードをでっち上げて捜そうとしている臭いがプンプンするし、万が一本当にあったことだとしても、よく考えるまでもなく、看護師さんの大半って女性ですよね。

毎日何人もの患者のケアをして忙しい看護師さんにしてみれば、患者というのは「通り過ぎてゆくもの」。凄まじく個性が強いとか、何度も入退院を繰り返しているとか、印象に残り記憶するフックがない限り、退院した人間を忘れずにいるなんて至難の業ですよ。そんな記憶もおぼろな人間が唐突にあらわれて「あのときお世話になった患者です」などと始めたら、男性だって薄気味悪くて恐怖を感じると思いますよ。女性ならばなおのことです。

今、京都の舞妓さんが街中を歩く姿は、ほぼ見られません。置屋さんからお座敷へ出たりするときは、お客さんや女将さんが呼んだハイヤーで移動すると聞いたことがあります。うっかり舞妓姿で歩こうものなら、外国人の観光客に取り囲まれてバシャバシャ写真を撮られるからです。歳頃のおんなのこが、突然見も知らぬ相手に取り囲まれるなんて、恐怖以外の何物でもないでしょう。看護師さんだって同じです。

中には、ツイートを読んでリツイートしてしまうどころか、病院名まで出して特定に協力している人もいるようですが、鈍感な善意の怖さが如実にあらわれていませんか。

実際、看護師さんにはよくある話のようで、ツイッターのまとめ記事を読むと、退院した患者がストーカーになって大変な思いをした、という方もいらっしゃるようです。

こうなると、感謝と恋とを勘違いしているとしか思えませんね。

都合よく夢や願いを押し付けようだなんて、迷惑もいいところです。

鈍感な善意よりも明敏な悪意のほうが、よほど付き合いやすいですよ。