雑種犬肉球日記

雑種犬が書いたブログ。

エル・ジマドールとバカルディの地に想いを馳せる

職場の人員手配の関係で、いつもなら金曜の休みを、今週だけ急遽木曜に変わっています。明日は休みだぜヒャッハー!

何しようかなあ。ひとり押井守映画まつりでも開催しようかなあ。

あれ、パソコンに何のDVD入れてたっけ。

 

今日はネタが浮かばないから、もう読書感想文にしますわ。

よろしくて?(お蝶夫人の髪型で)

はい書名ドーン。

「予告された殺人の記録」。作者はガブリエル・ガルシア・マルケス

同じ南米出身の作家でありながら、パウロ・コエーリョはどうも「違う星に住んでる」感ばかりで違和感しかなかったけど、ガルシア・マルケスは、あるとき思い切って「百年の孤独」を読んだら、なんかもう初めて喰った赤福に魅了されて折り一箱独りで一気喰いした子供みたいにどハマりしたものですが、マジック・リアリズム最高潮の「エレンディラ」「族長の秋」とか、そっちについて語り出すとキリがないからやめときます。うまく波に乗ってハマれれば面白いし、何度でも再読に耐える凄い小説だけど、マジック・リアリズムって結構癖が強いので、乗り切れないとお話の最後まで置き去りにされてしまうから、あんまり誰彼構わずおすすめするわけにもいかない。

で、マルケス作品の中でも、ちょっと毛色の違ったこの作品をあげてみました。

 

27年前。町ぐるみでのお祭り騒ぎとなった、あるカップルの結婚式の翌朝、犯人自身がやると公言していたにも関わらず、起こってしまった殺人事件。その顛末と、そこへ至るまでの関係者たちがとった行動、その理由や事件の後の運命などを、関係者の一人でもある作者自身が、家族や友人、近所の住人、親戚などに会ってインタビューし、虚実入り混じった作品として書いたもので、どこまでが現実なのか、どこからが小説なのか、夏の日ざかりに、大騒動の只中でうとうとと半分まどろんでいるような、ザックリと「ここから現実」とスパッと分けることができない、そんな小説。

結婚式の翌朝、小さな町は妙な具合の緊張に包まれています。どんちゃん騒ぎのあとでみんな疲れてる、けれど商売のために早く起きたり、宴会の後もそのまま呑み続けて起きていた人は、犯人に会って、本人の口から「これからあいつ殺すんだ」と聴いていて、まさかと思いながらも、名指しで殺すと宣告されている若者を見かけるとドキッとしたり、一体どう注意を促したものかと頭を悩ませたりして、みんながもう「いつ来るのか」とそわそわしている中、ざわざわと波紋のように、起きるべくして起きた事件の報せが伝わってゆく…。

その瞬間の詳しい描写は最後の最後、当の犯人自身へのインタビューとして書かれていますが、そこへ至るまでの、周辺の人物達についての記述もまた、なぜ事件が起こったのかを読み解く上で、大事な情報であり、それぞれに様々な物語を背負っています。被害者の婚約者の後日談は妙なリアリティがあるし、前夜の結婚式の主役だった新婦のその後も凄みがあるエピソードです。個人的に好きなシーンは、酔っ払って帰ってきた弟がトイレで寝てるシーン(笑)。一度座ると立つのめんどくさくなるのと、狭い個室だとなんかそのまま自然に寝てしまう感じめっさわかる。

これを読んだときに、現実のあまりのドメスティックさと、ドメスティックも行き着くところまで行くとむしろ劇的になるんだなと、ホント思い知らされました。

一度でもいいので読んでみてください。中編で、文庫もさほど分厚くないので。