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雑種犬肉球日記

雑種犬が書いたブログ。

「ユーリ!on ICE」を雑種犬が雑に考えた

昨日は「4時間かけて打ち込んだ文章がUPした瞬間この世を去った」という、血も凍り髪の毛の太るようなことが起こりました。

改めてやるしかあるまいよ。

まあ、消えたものは下書きだと思って、もう少し整理してやり直しです。まず気づいたことをザクッといきます。

それでは。

 

雑種犬なりの考察「第一滑走を考える  勝生勇利とは何者か? 」

 

タイトルとして挙げたように、この第一滑走では、ほぼ1話分をまるまる使って、我らが主人公・勇利の人となりを、スケートに対する気持ちや周囲の人達との関わり方を通して、丹念に描いています。更に、勇利が憧れるスケーター・ヴィクトルについてもまた要所要所で描かれ、それがこの回のアクセントにもなっています。

最下位に終わったソチでのグランプリファイナルで、帰省した実家で見る世界選手権の中継で、勇利が見つめるヴィクトルは決して手の届かない遠くにいて、はじめから「届かないから追いかけられる」存在です。同じように引退を噂されていながら、勇利はメンタルの弱さ故の限界を、ヴィクトルは様々な試みで世界を驚かせたものの行き詰まりを感じて、と、およそ真逆の理由であり、そこから勇利の危ういくらいの脆さと繊細さ、ヴィクトルのスケーターとしての華々しい才能やそこから生まれる重圧を、端的に描いています。

勇利はグランプリファイナルのあと、帰国のときにすれ違ったヴィクトルに記念撮影するかい? と声をかけられるものの、最下位という結果と、そんな自分が氷の上でなら気後れせずに憧れの人と会えるのではなどと思い上がっていたことが恥ずかしくて、返事すらできずに去ってしまう。何事にも受け身で、自信も気力もない、かろうじてなけなしの誇りだけが彼を支えている状態だから、とにかく他人からの期待が重くて、プレッシャーでやけ食いもするし、ファンサービスも苦手でぎこちないし、バレエコーチのミナコ先生にも押し負ける。自分でもまだ引退か現役続行か、答えを出せるほどの確固たるものを持てなくて、何もかもに迷っているんですね。久しぶりに会った初恋の女性は、気持ちを伝えられないまま何年も前にリンクメイトと結婚しているし、勇利にしてみれば「僕からスケート取ったら何も残らないんじゃないのかな」と、あんまりにも自分になにがしかの根拠も感じられなくて落ち込んで、しまいには孤独を諦め気味に受け入れて、それなら何が必要なんだろう、なんて考えるところまで行ってしまっています。

それでも失望はしたくない。

だから「スケートを好きな気持ちを取り戻したくて」子供の頃から憧れたヴィクトルのプログラムを練習し完コピして、リンクメイトだった初恋の優子ちゃんに披露するのです。好きが嵩じての、純粋なファン故の完全な再現。奇しくも世界選手権では、全く同時にヴィクトルの同じプログラムが。

誰一人気づかぬままのシンクロニシティ。真逆のベクトルで同じく引退を噂される二人が、同時に同じプログラムを滑るこのカタルシス

曲は「離れずにそばにいて」。テノールの独唱で歌われるそれは、この段階では、ヴィクトルについては誰にともなく、勇利は決して届かない聞こえないとわかっているからこそ歌えるものとして歌われています。

勇利の実家の温泉宿で、一杯機嫌のミナコ先生は中継を観ながらひと言「こういうのはもっと若くてウブなおとこがやるからグッとくるのよ。ヴィクトルみたいなイケメンじゃなくて、そうね、」と漏らしたその次のカットで、まさに「若くてウブなおとこ」勇利が完コピというこの演出の妙!ブレードが違うのですぐわかるのも細かいよね。ヴィクトルは金の、勇利は銀のブレードだから、シューズを見ればすぐわかります。

世界選手権後の記者会見で、来シーズンの抱負を訊かれたヴィクトルは「またそれかあ」といま一つ冴えない表情で「リビングレジェンド」「皇帝」とまでいわれる彼もまた、なにがしか引っかかるものを感じているようです。

ここで物語は大きく動きます。リンクメイトだった西郡と優子ちゃん夫妻の子供たちが、ヴィクトルのプログラムを完コピした勇利を隠し撮りして、ネットに流してしまいます。あっという間に世界中に拡散、ついにヴィクトル本人が映像を観るまでに。それまで笑顔でファンやマスコミに応じていたヴィクトルが、真剣な表情でこの動画を観て、何事か思い立った様子を匂わせます。一方の勇利は、西郡から動画流出を詫びる電話で飛んでもないことが起きたと知るものの、あまりの急な出来事についていけずにいた数日後。

家の手伝いを頼まれると、玄関先に犬が。去年のグランプリファイナル直前に死んだ愛犬にそっくりな、でも愛犬・ヴィクトルよりも大きなその犬に驚いている勇利に父親は「かっこよか外国人のお客さんが連れてきた」…あるわけないと思いながらも、確かめずにいられなくて、大慌てで露天風呂へ走ると、そこには。

 

出逢いはまさかの全裸でした。

 

ファンサービスやマスコミ向けとは違う、満面の笑みで手を差し伸べて、いきなりの宣言。

今日から俺はお前のコーチになる。グランプリファイナルで優勝させるZO☆」

憧れの人が。いきなりやって来て。全裸で。もう驚くことしかできないですよ。

孤独を当たり前だと思って、色々なものをただ受け入れて生きようとしていた勇利の生活が、この出逢いでガラリと変わる。そんな予感を漂わせるラストです。

この、才能を持ちながらもメンタルの不安定さで伸び悩む勇利が、これからどう化けるのか。実に楽しみですね。

優しく見守る両親、ドライなりに弟を思いやる姉、教え子の背中をどやしつけカツを入れるミナコ先生、常に励ましてくれる西郡一家。周囲の人達との関係を通して、勇利がどんなおとこの子なのか、どんなスケーターなのかが、しっかり描かれています。これからそこへ、ヴィクトルがどう関わってゆくのか。

とにかくそれぞれの人物をきちんと、箇条書きのようにでなく、有機的な互いの関わりの中で自然に描写しています。どうということのない会話ひとつで、ここまでやれる。

ホント凄すぎる。

気がついたことをザックリ書き出しただけでこの文字数ですよ?

これ、更に分解したらすごいことになりますよ。細かいところは追い追いやることにして、今回はこの辺にしておこう。

そのぐらいの情報量を、こんなに自然に、詰め込み過ぎなどと微塵も感じさせずにやってのける。途方もない傑作です。

 

ところで勇利って、なかなかかわいい顔してるよねー。