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雑種犬肉球日記

雑種犬が書いたブログ。

「ユーリ!!! on ICE」を雑種犬が語ろう 第三滑走・ハートに火を点けて【後編】

前回のあらすじ

 

押しかけコーチ・ヴィクトル=サンを追いかけて、遠くロシアからやってきたユリオとスケート勝負をすることになってしまった勇利。今までにない「エロス」というテーマでの演技にとまどいを隠せない勇利と、やはり初めて挑戦する「アガペー」というテーマに苦戦するユリオ。勇利はアイスキャッスルや公園で基礎練を、ユリオは寺で座禅の毎日だったが、ついに滝行を命じられる。一方その頃、ヴィクトル=サンは長浜でラーメンをすすっていた…!

 

という訳で、後半戦始まります。

 

翌朝、朝練にヴィクトル=サンの姿がありません。どうもユリオの話によると、朝まで呑み歩いていたみたいですね。ダメじゃん。で、肝心のコーチがいないので、2人で自主練です。そこで勇利、ユリオに切り出します。

「4回転サルコウを教えてください。頼む!」

相手が歳下でまだ子供でも、ちゃんとユリオの技術や才能にリスペクトを持ってお願いしています。なかなかできないよね。ユリオも一人前のスケーターとして認められているのが解ったのか、憎まれ口を叩きながらも、きちんと教えています。いつの間にか、勇利のことも「ブタ」じゃなくて「カツ丼」と呼ぶようになってますね。夕飯のカツ丼おいしかったんだね。

そんなことしてるうちに、半分がた寝とぼけた顔でヴィクトル=サン登場。何だか照れ臭くて、慌てて振付の確認に入る2人。

振付をおさらいしながら、ユリオが思うのはじいちゃんのことでした。ユリオにとって、無償の愛を注いでくれるのは、いつだって親ではなくてじいちゃんだから。

その表情を見て、ヴィクトル=サンが呟きます。ユリオのアガペーが見つかったようだ、と。

ネクストステージに進めるかな?」

その言葉を聞いた勇利も気づきました。何を思い、何を動機として演技するのかが見つけられても、それを昇華して作品にというかたちにしなくては。

カツ丼というモチーフは見つかった。それじゃあ、カツ丼を「エロス」という作品にするための、プログラムを通す大きなコアになるものは何だろう?

手応えを得られないまま、エキジビジョン対決の前夜を迎えました。

練習後、勇利の家・ゆーとぴあかつきの食堂で一杯機嫌のミナコ先生がそういえばさあ、と思い出し、

「あんた達、明日の衣装ってどーすんの?」

するとヴィクトル=サン、大丈夫!と生ビール片手に請け合います。

「ロシアから今まで俺が着てた衣装、送ってもらったから!」

ユリオは山と積まれた衣装を見て「トンチキな衣装多いよな」なんて言ってますが、勇利にとってはまさに宝。手にとった1着を見て、ヴィクトル=サンがそれを着ていた頃を思い出し口にした言葉が、勇利にインスピレーションを与えました。深夜という時間もかえりみず、ミナコ先生のところへ押しかけます。

「教えてほしいことがあるんだ!」

 

ここからが第三滑走の山場!

 

翌朝、いよいよエキジビジョンの当日です。

ロシアからユリオが来て、しかも勇利と勝負すると聞きつけたテレビ局が中継に来ています。実況は勝生番・諸岡アナという熱の入れようです。試合前のインタビューまでしてますが、当の勇利は「長谷津で温泉入ったりしてもらえれば」なんて観光アピールしていて、テレビ中継にちょっとびっくりしてますね。元々が気のやさしい子なので、取材受けてコメントして、なんて注目を浴びるのは苦手なのでしょう。片やユリオは肝が据わっているので「ユーリは2人もいらない。ぶっコロス」なんてテレビ受けしそうなコメントしています。で、ヴィクトル=サンはどうしたのかなと思っていると、コメントを求められて出てくると、思いきりふざけています。裃姿にはせつ観光大使のたすき掛けで観光アピール…。自分が置かれた立場を面白がってます。一番の年長者が一番ダメ。まあ、変にガチガチ緊張してるよりはいい雰囲気ではありますが。

一抹の不安を感じつつ、試合はユリオのプログラムから始まります。

出番を知らせに控え室へ顔を出した優子ちゃんを鼻血流して歓喜させた、ヴィクトル=サンのジュニア時代伝説の純白透けクロス衣装で、アイスタイガーなんて粋がるヤンチャ小僧の面影は欠片もありません。どこまでも清らかなソプラノのヴォーカルとメロディもあって、もともとがかわいらしい美少年なのと、持ち前の超絶技巧の滑り、鮮やかなジャンプとでホントに天使がダンスしているようです。

でも、ユリオの本人は演技の中で、自分には情緒的な表現力が欠けていることを思い知ってしまいます。

誰が指摘したでもないし、観客はみんなユリオの演技に引き込まれている。勇利も「みんなユリオのアガペーに引き込まれてる」と認めていますが、当の本人は痛いほど思い知ってしまっているのです。テクニックで惹きつけるのと、真に自分の中から湧き出る「今この一瞬」のアウラで魅了するのとは根本が違うのだと。だから心のうちで叫ぶのです。「じいちゃん、ごめん。まだこなすのに精一杯で、アガペーとか考えきれねえ!」「こんなもんじゃねえんだよ、オレは!」ヴィクトル=サンによる高難度の構成。初めて挑むテーマ。まだ若くて、圧倒的に経験が足りていないもどかしさ。それでも、ユリオは今現在の自分が持っているもの全部で勝負しました。だから、作品としては納得かずとも、やれることは全部やったという点では悔いはない。ヴィクトル=サンに「お客さんに挨拶しないと」と促されたあの笑顔は、だからちょっといい顔していますよね。

 

ユリオの演技に、またユリオのスケーティングに沸く観客に、勇利の不安と緊張は最高潮に達しています。

「僕が負けてしまえば、ヴィクトルはロシアに帰ってしまう。いやだ!」

追い詰められた勇利が、ここで初めて強い感情を持ちます。

勝たなきゃ。勝ちたい…勝ちたい!

たぶん、勇利にとっては初めて「なりふり構わず勝ちたい」と思うのと同時に「負けるのが怖ろしい」と無情の恐怖に襲われた瞬間かと思います。ただでさえメンタルが弱いだけに、これまでの試合だって、やっぱり勝ちたいとも負けたくないとも思いプレッシャーを抱えていたであろうことは、容易にうかがえますが、この勝負は訳が違います。子供の頃から憧れ続けてきた、スケートを続ける動機そのものの人を賭けているのです。これから先、自分がどう生きてゆくのかが、この3分にも満たないプログラムで決まってしまうのです。勝ちたい、と繰り返す心の声は、やっと絞り出される悲鳴でした。

狭まる視野。俯いて自分の足の爪先が見えているのかどうか。目の前が真っ暗になる寸前、ヴィクトル=サンが出番だよ、と声をかけます。

顔を上げると、勇利のすぐ目の前にヴィクトル=サンが立っていました。死ぬほどびっくりしたのか、声をあげそうになるのをおさえると、勇利は溺れる人が縋るような必死さでヴィクトル=サンに抱きつくのです。

「あ、あの、僕、すっごくおいしいカツ丼になるんでッ、しっかり僕だけを見ててください。——約束ですよ!」

おそらく、これが勇利にとって初めて「目の前のこの人を何としてでも引きとめたくて」出た言葉なのではないかと思います。思わず抱きついてしまうくらい、離れること失うことが死ぬより怖ろしいことに感じられているのでしょう。

 

「もちろんさ。カツ丼大好きだよ」

 

だから、ヴィクトル=サンのこの答えは、勇利には自分を受け入れてくれる最高の言葉だったのでしょう。まさにこのひと言で、勇利は救われたのです。

まさにこのひと言で、勇利の「ハートに火を点け」たんですよ。

 

氷の上に立った勇利の姿に、観客がざわめきます。黒一色のその衣装は、ヴィクトル=サンが男女両性をイメージしたプログラムを滑ったときのものでした。

ステップシークエンスの挑発。スピンの翻弄。アウトサイドイーグルのためらい。そしてジャンプの熱情!トリプルアクセルの怒濤、4回転サルコウの奔流、4回転トウループトリプルトウループの終幕!サルコウこそ手をついてしまいますが、勇利はしっかりと演技に乗っていて、すぐに気持ちを立て直します。それも、ラストに4回転3回転のコンビネーションという大技を見事に決めてみせるのです。

勇利がこのプログラムの主人公に据えたのは、ヴィクトル=サンの振付の見本で感じた色男ではなく、色男を惑わせる街一番の美女でした。

勇利はミナコ先生に教えを請うた前夜、こう言うのです。

「こっちの方が、僕の中ですごく似ている感情なんだ」

色男に誘惑され恋の駆け引きをする美女の方が、今の自分の置かれた状況に近く、相通じるところを感じるぶん、表現しやすく思う、と。

氷の上の勇利をじっと見つめるヴィクトル=サン。その背中に、また勇利の演技に目を奪われる自分に、ユリオは負けを悟り、結果も聞かずに帰ってしまいました。テクニック云々以前の、艶とでもいうべき部分で、ユリオは負けを認めたのです。

アイスキャッスルを後にするユリオ。まだ結果が出た訳じゃないからと引きとめる優子ちゃんに「ヤコフのところで続ける」と言い残し、ロシアへ帰ります。

自分が持っていないものを武器とする勇利と戦うのなら、同じ道を歩いていては勝負にならない。違うところで違う武器を手に入れなければ、対等な立場で土俵に立てない。そう悟ったのです。

 

リンクサイドでは、ヴィクトル=サンが勇利を迎えます。

「あんなおいしそうなカツ丼、初めて見たよ!素晴らしい!」

手放しで褒めるヴィクトル=サン嬉しそうです。が。すぐに、ひとついいかな?と厳しい表情で、ひとつどころでなくダメ出しのラッシュ。その褒めとダメ出しの配分、あなたは富野監督ですか。

結果はというと、やはり演技の艶が段違いなところで勇利の勝ち。おめでとう!

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お立ち台のインタビューで一瞬言葉に詰まるところは、引っ込み思案でファンサも苦手なところが如実にあらわれていますが、あら不思議。隣に立ってるヴィクトル=サンが肩を抱くと、ちゃんとしっかり喋れるようになります。ヴィクトル=サンの存在は、勇利の中でそれほど大きなウェイトを占めているのですね。カメラやマイクに気後れせずに受け答えできるようになったのも、「憧れのヴィクトルが」「自分を選んで」「そばにいてくれる」という事実が、自信を持つ根拠になったのでしょうか。

 

さて。第二滑走をバラしてほぐして思ったことを書いた折にちょっと触れましたが、ヴィクトル=サンがなぜ、エロスとアガペーの振り分けをああしたのか。

ユリオにアガペーを振り分けたのは、まずこの第三滑走の段階では、今この段階で情緒的な表現力が欠けていることに気づかせるということでしょうか。もう一つ、長期的な狙いも薄々感じられますが、それは終盤に追い追い。まあ、短期的というか即効的な狙いは当たって、ユリオは自分に足りないものを悟って、違う方法論で修行するためにロシアへ帰りました。

勇利にエロスを演技させたのは、今までとはまるで違うことをさせてブレイクスルーを狙う、ということでしょうか。新しいことに挑戦してひきだしを増やして、更にその過程ですでに持っているものに気づかせて自信を持たせる。

と、割と真面目に推測してみましたが、それにしてもヴィクトル=サン、ホント勇利大好きだよなあこの人。ユリオのことは褒めるにしても何にしてもあっさりしてて簡単にやっちゃうけど、勇利相手だと手放しで褒めるしダメ出しはそんな詳しく触れないでほしいってくらい細かくやるし。たぶん、勇利の才能にどっぷり惚れ込んでて、それを「俺が」最大限に引き出してコーチしたい、って育成欲をメッチャクチャ刺激されたんだろうな。「  俺  が  育てました‼︎」的な優越感。

いや、あのヴィクトル=サンのことだ。単に「俺の勇利最高でしょ?」って世界中に見せつけちゃうZO☆ってだけかもしれない。

 

よし、何とか第三滑走ぶんが終わった…。

この先を考えると今からオソロシイですが、まず第四滑走の解析に入ります。

出来次第公開予定。あんまり楽しみにせずにお待ちください。それでは。