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雑種犬肉球日記

雑種犬が書いたブログ。

「ユーリ!!! on ICE」という驚異を見つめる 第四滑走・その傷こそが輝きになるから【後編】

ここ2日は「ユーリ!!!」第四滑走にかかりきりでしたが、今日でそれも終わりです。

 

前回は第四滑走の要ともいうべき、海岸のシーンまでを、イロイロ考えながら観ていきましたが、今日はそこから先に進みます。

 

ヴィクト=サンとの対話で、人との関係の持ち方、踏み込むこと、踏み込まれることから逃げずに向き合おうと覚悟できるようになった勇利。少しずつ、自分の直感を信じられるようになりました。曲の作り直しを依頼して、ヴィクトル=サンにも報告します。一度はダメ出しをした曲ではあっても、自分に自信を持てるようになりつつある勇利が、直感でこれと選び取ったものです。勇利が見せる変化が嬉しくて、ヴィクトル=サンも「楽しみにしてる」と期待しています。そこで勇利は更に続けて、

「それまで、だから、ヴィクトルの飛べるジャンプ、全部教えてください!」

迷いがなくなったぶん、自分が進むべき方角がはっきりして、前へゆくためのちからを貪欲に求められるようになりました。

ユリオに続いて、勇利もいよいよ本格的にシーズンへ向けて動き出します。

 

ユリオはリリアの厳しい指導で、勇利はヴィクトル=サンとときに冗談を交えながらリラックスした空気で、それぞれ練習の毎日。

数日後の夜、勇利が、依頼していたでも曲のアレンジがメールで届きました。すぐに寝入りばなのヴィクトル=サンを起こして、曲を聴いてもらいます。

聴くうちに、満面の笑顔に変わって大きくうなずきました。

翌朝の練習で、ジャンプの構成についてヴィクトル=サンが提案します。

インパクトを与えるなら、ラストのジャンプは4回転トウループでどうかな」

体力が大きく減った最後に、4回転の大技。ためらう勇利に、

「体力のある勇利ならできると思うけど、やめとく?」

ヴィクトル=サンのひと言に、即座にやる!と答える勇利。勇利ならできる、と信じてくれている気持ちが嬉しくて、それに答えたくなったのでしょうね。ここまで自分の言葉をまっすぐ信じて慕われるって、ヴィクトル=サン、コーチ冥利に尽きるよね。もうホントこの二人、お互いのこと好き過ぎだろ…。

デモ曲を聴いたときに感じた疑問を、ヴィクトル=サンが訊ねます。

「勇利、この曲、テーマ変えた?」

どこか弱い、と勇利本人も感じていた最初のバージョンから、大きく様変わりしていたのでしょうね。勇利はああ、とちょっと恥ずかしそうに口ごもって、

「テーマは、僕の愛についてです!」

この曲については、ずっと勇利が独りで動いて頑張っていたので、胸を張って誇るまではいかなくとも、やれるだけのことはやったという自負はある。ただ、それが正しい選択なのかは解らない。あとはヴィクトル=サンが自分以上に自分を信じてくれている、それだけを頼りに覚悟を決めるだけ。たぶん、そのぐらいの気持ちでいたのだろうと思います。

曲のテーマをきいて、ヴィクトル=サンはうなずきました。

「最高のテーマだね。完璧!」

たぶん、ヴィクトル=サンはこれを待っていたのだと思います。

勇利の中から、自然に湧き出る強い思い。だからこその、手放しの賞賛です。

フィギュアスケーターはアスリートであると同時に表現者、芸術家でもある。そこへ持ってきて、勇利のような、情緒的な表現で観客の心をつかむタイプのスケーターであれば余計に、お仕着せのテーマでは芯からの表現を見せることは難しい。そう、きっと勇利は自分の心に嘘をつけないのです。全部スケーティングに出てしまう。

だからこそ、セルフプロデュースで、そのままを表現させようとしたのでしょう。

 

そして、ついに運命のアサイン発表!

 

対抗意識で燃え上がっているユリオは、アサインと聞いて「日本の子ブタ、どこに出る!」なんて、めちゃくちゃ気にしてますね。

勇利の家では、ミナコ先生に西郡家族も駆けつけて、出場おめでとうパーティーです。

勇利は去年の成績不振により、まず国内大会からのスタートです。そこで勝ち上がってから、グランプリ中国大会、ロシア大会と進みますが、中国では大親友のピチット君、ロシアではユリオが待っています。その前の国内大会では、若手ホープといわれる南健次郎という選手もいて、なかなかの強敵なようですね。

ああそうか、と勇利はそこで、自分はもう終わったと思っていた去年のグランプリファイナルから、もう半年以上経っていて、ヴィクトル=サンがいないシーズンを初めて迎えるのだと、ぼんやりと思います。が、

「ヴィクトルがコーチとして帯同したら、勇利がスケート界からヴィクトルを奪い取ったって思われそうだよなあ」

「世界中のスケートファンから恨まれてたりして」

なんて西郡夫婦の軽口からプレッシャーを感じたり。二人ともおやめなさい。

でも、勇利は確実に強くなってきています。

「今までずっと、独りきりで戦ってると思ってた。でも、ヴィクトルがあらわれてそれは一変した」

ときに不安になることもあるけれど、自分を信じるに足る根拠が持てるようになった。

「昔と変わらないもの。変わってしまったもの。すべてが新鮮に飛び込んでくる。失ったものをもう一度手繰り寄せることはできないかもしれないけど、何がそこにあったのか、今は、よく視える」

目標が定まった。自信を持てるようにもなった。勇利は少しずつだけど強くなって、今なら目標へまっすぐ走って行ける。

そして、ユリオもまた強くなっています。

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「俺は、この容姿でいられる時間は短いんだ。今利用できるもんは全部突っ込んで、絶対勝つ!」

大人になりきる前の、性的に分化されきっていない思春期だけの限られた美しさは、15歳の今しか使えない、ユリオの大きな武器の一つです。自分にはない、勇利の情緒的な表現や艶に真っ向から挑むのであれば、大人になっている勇利にはないものも利用して戦うしかない。ユリオは腹をくくって、リリアのプロデュースに従い、髪を伸ばして中性的な雰囲気をさらに強くします。練習中、ハーフアップにした髪を解くと、リリアも思わず「美しいわ」と漏らすほどの天使のような清らかさ。

日々練習に明け暮れながら、勇利は祈ります。

「僕達の競技人生は短い。きっとこれが僕のラストシーズンになる。ヴィクトルがあらわれていつまでいてくれるかも、体がもつかどうかも判らない。だから神様。どうか今だけ、ヴィクトルの時間を僕にください」

勇利にしてみれば、ラストシーズンになるスケートの神様が最高の夢を見せてくれた」という感じなのでしょう。元々が謙虚な子だから、こんなに幸せでバチが当たるかも、と思っているかもしれません。

第四滑走のラストは、デモ曲にタイトルがつきます。

勇利が曲のデータを焼いたディスクに書いた、そのタイトル。

 

「Yuri on ICE」。

 

この曲と、ヴィクトル=サンから託された「愛について」。愛をうたう2つの曲を引っさげて、勇利は新たなシーズンに挑みます。

 

こうしてみると、本当にこの第四滑走が最初の山なんですよね。ここで見事に、これまで見せてきたキャラクターたちの関係が強固なものになって、更に成長の兆しも見せてくれる。

こんなすごいことを、30分の1話分でやってるんですよ。

どんな奇跡なんですか。

ホントもう、何ぞ…何ぞコレ…!

断言します。「ユーリ!!!on ICE」は、青春小説や純文学でやるようなことを、よりスマートに、ど直球に、しかも面白くかつ感動的にやってます。

文字通り「触れる私と触れられるあなた」を、こんなに優しく美しく見せてくれるなんて。

ありがとう!

 

さあ、折を見て第五滑走にかかろう。