雑種犬肉球日記

雑種犬が書いたブログ。

たまには堅いもんも読まないとバランス崩れるよね

ときどき、古いギャグがたまらなく面白くなるときがありましてね。

「嫉妬しているのよシットそうよ!」とか「ああ何たるチアサンタルチア」とか、もう若者には伝わらないぐらい古いギャグ。

あとは、堺すすむ師匠のフラメンコ漫談。なんか好きなのよアレ。なーんでか。

いや、まあ古いもん好きですけど、ギャグまで好きか。そこまでか。

 

さて。

昨日はお茶飲みながら、本棚から「ティンカー、テイラー、ソルジャー、スパイ」を読んでいましてね。

ああ、映画好きの方なら「裏切りのサーカス」のタイトルにご記憶がありますでしょうか。この映画の原作小説です。

作者はジョン・ル・カレ。スパイ小説の話題になれば、まず必ず名前があがる作家のひとりですね。

映画も小説も、物語は言っちゃなんだけどとにかく地味。わかり易い、記号的な派手さはないですが、緊張感や細部にまで目を配り存分に手をかけた豊かさは半端なく濃厚です。最高級のお茶や、たばこを吸われる方なら、最高の葉巻を一服する贅沢さを思い描いていただければよろしいかと。

映画も小説も知らないよという方のために、少しだけかいつまんでご紹介しましょう。

時代は米ソ冷戦の真っ只中。英国情報部では、度重なるソヴィエトへの機密漏洩に苦しめられ、ついに大臣が極秘の対策を立案。一度は作戦の失敗を理由に退職を余儀なくされたベテラン諜報員・スマイリーに、作戦指揮官として白羽の矢が立った…。

小説でのスマイリーは、諜報員なだけに目立つのはご法度ということで、見た目はごくフツーのあんまりパッとしないおじさんとして描写されてますが、映画ではゲイリー・オールドマンがめっっっっっちゃくちゃ味のあるカックイイおっさんアトモスフィア漂わせてます。だいぶ以前の「レオン」の、脳味噌ヒャッハーな麻薬捜査官のイメージしかなかったので、いい意味で裏切られたというか、まさかこんなに味のあるいかすおっさんに化けるとは思ってもみなかった。そのぐらい重厚でいい仕事してます。

映画と小説とでは、出てくる土地が違う部分もありますが、物語の流れは一緒です。一番大きな違いは、スマイリーの奥さんが映画では後ろ姿しか画面に出ないことぐらいですかね。でも、みんな奥さんのことを口にして、事あるごとに名前は出るし、大きくウェイトを占めた「不在によって存在感を増す」人物となっています。小説ではちゃんと出てきて、結構思いのままの行動でスマイリーをかき回したりしてますね。なまじ奥さんがきれいだと、男は苦労するっていう典型。

物語でのスマイリーの使命は、かつての同僚たちの中から裏切り者を探し出すこと。苦楽を共にした仲間を疑い、いつ誰がどこで何をしたのか、些細なことまで思い出しながら、極秘にスカウトしたチームと共に標的に迫ってゆきます。

映画も小説も、これは何度でも読めるし何度でも観られる、その度に発見のある作品です。

地味とか難しいとかで敬遠するのはもったいないので、一度でもいい、ぜひこの驚きを体験してください。

映画にはカンバーバッチが金髪で出てるよ。