雑種犬肉球日記

雑種犬が書いたブログ。

ときには寝かせることも必要だという話

たまに、買いどきと読むべきときとがバラバラな本があります。

大概の本は買ったそのときに読み始めて、そのまましまいまで読んでいけるんだけど、読むつもりで買ったものの、読み始めてしばらくするとどうにも先へ進められなくて、でも確かに面白いのは解るので、ひとまず手放さずに置いたままにして、何かのきっかけでまた手に取るとすごい勢いでどんどん読んでしまう。

ありませんか。

私の場合、今読んでる「アイオーン」がまさにそれ。

歴史改変SFというと名前が上がる作家、高野史緒の連作小説です。

尼損で見つけて買って、読んだものの途中でそのままにしてしまいましたが、手放さずに取っておいた去年の私よくやった。

昨日から読み始めて、収録されている6つの短編中編の、最後のエピソードに差し掛かりました。

面白いです。

主人公と、冒頭の短編で彼が出逢った人物及びその子供達の旅の道行を、それぞれ連作形式で描いた物語なのですが、連作の世界の大きな前提として、まず歴史にどでかいifを差し込んでいます。連作の語り手たちは、そのifに繋がる謎を追いかけ、あるいは受け継ぎ、ときに探求者として、また使徒の継承者として、旅を続けます。自分の信念や信仰を問われながら、また自分でも疑いながら、それでも真実を求めて歩くのです。

この方のSF小説は、大概は中世・近代の時代設定に現代の科学技術がプラスされると何が起こるのかという一種の思考実験的な要素もあって、毎回スケールが大きいことをしてくれています。長編「赤い星」では、幕末期の日本と同時期の帝政ロシアにネット技術が存在していたら、という世界観で、帝位争いの末に即位したロシア皇帝を巡る陰謀、主権回復のためそれを利用しようと目論む属国と化した江戸幕府と、そこへ巻き込まれる下町のハッカー娘と幼馴染の吉原の花魁、という、もうなんか目から血ィ噴きそうな絢爛豪華さ。

あんまり突飛な設定はちょっと、という方には「カラマーゾフの妹」をお勧めします。

あの「カラマーゾフの兄弟」の後日談、というだけでなく、更にもう一捻り入れて来た小説です。あの裁判ののち、ミーチャは、イワンは、アリョーシャはどうしていたのか。伊藤計劃円城塔屍者の帝国」で描かれた「あの裁判の後日談」は凄まじかったですが、こちらもまた捨てがたい。ああ、亀山郁夫先生の「続・カラマーゾフの兄弟」も読まねば! 読まずに死ねるか!

明日仕事から帰ったら、シンガポールGP始まるまで残りのエピソードをゆっくり読もう。明後日は休みだ。

今日のところはサクッと寝よう。