毒気の強い、不穏当なものが読みたい。
ときどきやってくる、毒強化キャンペーン周期ですよ。
毒気を求めるあまり、本棚から江戸川乱歩短編集出して「芋虫」読みました。
正直、乱歩作品に触れたことがない、または少年探偵団しか知らないという方には、この短編はお勧めできません。「人間椅子」「陰獣」辺りを読んで、拒絶反応がなかったら挑戦してみた方ががが。
次は何を読もうか。
最近の作家よりも、昔の文豪に多いんですよね。不穏当で毒が強くて禍々美しい小説って。
倉橋由美子は「蠍たち」を推します。
武田泰淳の「ヒカリゴケ」は、あれは違う枠です。私の中では、戦場残酷物語枠です。
漱石の「夢十夜」は、毒よりも不可思議さと美しさが勝っていますが、これも捨てがたい。
内田百間の「冥土」も不穏でいいですね。
萩原朔太郎の詩「猫」も、ビョーキっぽくて好き。プレステ版「BAROQUE」にどっぷりはまり、明けても暮れても隙あらば神経塔に潜っていた頃、天使虫と一緒に何度「おわあ」と啼いたことか。ここの家の主人は病気です。
ああ、忘れちゃならない作品がまだまだあった。
川端康成の「片腕」!
渡辺温「可哀想な姉」!
極めつけはこれ、夢野久作「瓶詰の地獄」!
こうして並べると、みごとに偏ってますね。最近の作家でここに加えるなら、綾辻行人「深泥池奇談」及び続編、京極夏彦の「幽談」をはじめとする「談」シリーズでしょうか。
こんなことを書いていたら、もう「地獄変」読みたくて仕方ない。十代の頃に読んだときは、絵一枚のためにそこまでやるのかよと思ったものですが、今はね、そこまでする執念だとか妄執だとかの持つちからの怖ろしさだとか、そこまでやらずにいられない人間の性だとかの怖ろしさに圧倒されますね。
「片腕」は、「細雪」だとか「伊豆の踊子」の名作のイメージをまず捨ててから読んでください。えろいです。背徳的です。「眠れる美女」と一緒に読むとなお良い。こちらも非常にえろいです。
夢野久作の「瓶詰の地獄」は、実に理想的で堅牢な構造の短編だと思います。あれ以上何かを書き加えれば蛇足でしかないし、どこか一箇所でも削ってしまえば訳がわからなくなる。物語自体も、美しいが故に地獄と化す楽園だなんて、すさまじいにも程があろうというものです。
あとは、中編だと海野十三の「十八時の音楽浴」もいいですね。世にも美しい音楽を背景に破滅が繰り広げられて、最後には音楽しか残らないというのが、もうね、海野十三、実は未来人で、未来センスでめっさ時代先取りした小説書いてたんじゃないのかと思っちゃいますよ。
ひとしきり書いたら少し落ち着いたので、洗濯物干して寝よう。