これを読んでくださっているあなた。美男美女、お好きですか。
好きに決まっているだろう、という方、あるいは美人とお付き合いして散々苦労した、とややトラウマ気味の方、様々いらっしゃるかと思います。
ちなみに私は、見るだけ眺めるだけなら大好きですよ。
お近づきにはなりたくないのか? なりたいとは思わないですねえ。
だってね、考えてみてください。
仮に、ものっそい美人とお付き合いしたとしましょうか。容姿から声、ちょっとした身のこなしから服装のセンスまで、何もかもが完璧な超ストライクな、そういうお相手を想像してみてください。
誰もが羨む関係ではあっても、相手に近づくあらゆる人間に、いちいち嫉妬してしまう。そんなバカなと解っていても、道を尋ねるご老人やティッシュ配りの着ぐるみにまでとにかくジェラシい思いを抱いてしまう。ご近所のおじさんおばさんに挨拶でもしようものなら、自分でもバカバカしいと解りきっている妄想を逞しくしてグルグルしてしまう。それだけで既に疲れているのに、相手のステキな容姿に少しでも釣り合いを取ろうと、生活に必要な物を犠牲にしてでも服や靴、装身具になけなしの金をかけ、ふと我に返れば、どうにもしようがない程疲れ果てている自分に気づいて、慌ててそんなことはないと自己暗示をかける…。
はい疲れますね。流石にここまではないと思いますが、なまじ美人とうっかりお近づきになんてなれば、この手の苦労の幾つかを実際に体験するであろうことは、簡単に予測できる訳で。他人からのいらん嫉妬もあるでしょう。あんなにステキな方がこんな平凡な人間と付き合っているのかと、分不相応だろうという目で見られもするかもしれない。ああ疲れる。考えるだけで疲れる。
仮定の話だけでこんなに疲れるんだから、もうね、美人は遠くから眺めて、ああイイ目の正月、これで寿命が三年伸びた、とか云っていればいいですわ。
お近づきになっても面倒しかないんだからさ。
以上の理由から、美人は新幹線の中から富士山でも眺めるような、間違ってもご縁の結ばれようなどない距離から眺めるのが一番と悟るに至りました。
美男美女は嫌いじゃないけど面倒事はちょっと、というのなら、映画やドラマを観ればよろしい。私は平和な生活を送りたいので、更に距離を置いて二次元で満足致しますが。
一晩酒を呑むのなら、オツムの中身が容姿と反比例した美男よりも、見てくれは多少劣っても、頭のよい話し上手と呑むほうがはるかに楽しいと思いますが(賢い美人、という人なら歓迎だけど、残念ながらツチノコと同じくらい発見は至難の業)、あなたはいかがですか?
私は、内藤泰弘先生の描かれるウルフウッドかスティーブンさんが次元の壁を乗り越えてあらわれたら、考えを改めます。