師走の休日に朝から出かけておりましたよ。
電車賃がないので、給料日だからってんで朝イチで振り込まれてるのを確認、その場でおろしてSuicaにチャージ。各種支払いと遠征資金分を口座にぶっ込んだところでマミーと星海坊主(親父)が駅前まで出てきたので合流。今日はまたマミーの希望でこういう場所へ行ってきました。
両国の江戸東京博物館。特別展時の浮世絵を見に行ってきました。
最寄りの両国駅で「なぜ千代の富士がいない! 」とドン包平ばりのバカ声張り上げる私。「だよなー」と同意してくれたのはたぬき君だけという釈然としない結果ですが、まあいい。
今日は特別展示のみなのでソフトなコースです。ここは館内の通常展示がやたらと広いから、そこまで見ようと思ったら一日ぶち込むつもりでいないとダメ。
特別展は撮影できねーよだったので、博物館出入口近くの熊手。あと今日の昼は食ったのに腹が減るという怪奇現象に見舞われました。近侍と共に「やばい食ってるのに腹が減る」とヒソヒソする管理人さん。テーブル席に近くには骨董家具とか飾られてます。こういうの置ける部屋にするには、まず蔵書を片付けろという話だが無理だ。だが断る。
食事がちょうど1時前だったので、どうせ出てきたならと周辺を歩くことに。
両国駅前の観光案内所。わかりやすうい。個人的に会心の一枚はこいつ。
「管理人さん! たぬきじゃ! たぬきがおる! 」ってむっちゃんが嬉しそうにしてましたが、たぬき君にもお知らせしなくていいから。
そのまま回向院。
鼠小僧、当時の調書とか読むと盗んだ金は全部みごとに使い果たしてたそうですよ。貧しい家庭に配ったとかでなく。
やめろよ俺たちのドリームを壊すなよ。
あと境内におキャット様がおわしました。神々しき愛らしさに失明寸前。
回向院から5分も歩くとここ。道も迷いようがない。
看板が出てるのであんしんアトモスフィア漂う道のり。「これ見て迷ったら相当だよな大将」って薬研が感心しております。
先に言っておく。ドチャクソ狭いよ。吉良屋敷は現在、家一軒分ぐらいのスペースに縮小しております。これも住宅事情だ、仕方ない。ただ、中はたぶん近隣に保存会の方が住んでいるのか、ちゃんと掃除や植木の手入れがされているからきれい。赤穂浪士があれほど欲しがった屋敷見取り図も掲示されていて、当時に大名屋敷の構造や雰囲気に興味がある方にはよい資料になるのでは。
ここからまた移動。元禄から幕末へ。
こういう案内が、近辺にちゃんと出てるんですよ。
ということで、今日はここで引き揚げ。たまにはこういう散歩も悪くない。
ということで、浮世絵展の感想。
まず、歌麿から展示スタート。師匠はあの鳥山石燕だそうですが、師匠との共通項、吉原田圃以外ないじゃねえかよ!
師匠は妖怪画の名手で、絵に狂歌や洒落、川柳の要素を盛り込んで、三重四重に意味を読み解ける判じ絵の構造にしていましたが、その手の粋筋の文化は花柳界やら色街やらにもがっつり繋がっているので、読み解きにはそういう世間知も必要となっていくわけです。で、知らないと描けないんだから、そこから察するに石燕は相当な粋人だったようです。一方で歌麿はというと、広く知られる画題が美人画。師匠の作品とは違って、膨大な知識がないと読み解けないタイプのものではなく、誰でもが見てわかるストレートな作風です。題材が美人だからね、まあ色街にも行くだろうし、その辺の店の看板娘とかも詳しいでしょう。師匠よりはもう少し庶民寄りの作品や生活感のあるものが多いです。ポートレート的な感じ。
次の広重は、なんだろう、カメラマンでいうなら旅先の風景とかを撮るんだけど、題材も画面も品よく無難に仕上げてるから、うまいんだけど、なんか、こう、もうちょっと、となっちゃう。いや、うまいんだよ。すげえうまい。そこは確か。だから北斎の「面白いもんはなんでもやる」ってのを見ちゃうと物足りなさを感じてしまう。好き勝手やってるもんねえ。「カックイイってのはこういうことだ」と言わんばかりに「ここに富士山描くだろ、ホントはここからじゃ見えねんだけどさ、描くだろ、するってえとほらカックイイだろ」って描いちゃって、しかも実際カックイイ。で、またカメラマンでいうなら、すげえジャーナリスティックな傑作のあとにアイドルのグラビアやって、更にそのあとに風景やって地元の小学校の行事写真も撮る、みたいな、俺がやってみたいことはやっちゃおうぜ的な自由さ。で、また何でもやるから抽斗があほほど多くて場数も踏んでる分、いやでも上達する。
あとは写楽と国芳なんだけど、写楽もポートレート系の絵師だから、作品を見るうえでは歌麿同様、モデルになった人物についての解説があればそれなりに楽しめるけど、正直そういう副次的な情報はなけりゃないで構わないタイプの作品。だと思った。私は。
最後に国芳なんだけど、この人の作品も、北斎のものと同質。解説があるともっと面白い、奥行きがあるタイプの絵師。滝夜叉姫の餓者髑髏召喚もあったけど、この絵は見てカックイイだけでなく、この巻物持ってるおんなのこはヒロインっぽいけどどんな子なの、とか、背景も知ると更に楽しめる情報量が多い作品で、そういう作り方をする絵師のようです。
個人的には北斎と国芳の絵は面白いと思いました。こういう、何度でも楽しめるものが好きなもので。どんなものであれ、一度見ただけで「面白かったねー」でおしまい、は寂しいじゃないですか。それなりに労力をかけて金も時間もかけて作ったものを使い捨てってのもねえ。
出口近くにミュージアムショップがあったので、ちょっと買い物もしました。
広重の絵で唯一いいなと思った動物絵の中からおさかなちゃん。おキャット様と迷ったんだけど、おさかなちゃん。あと、北斎と対バン組める画力を誇る河辺暁斎の豆本。この人の絵もすげえから、見たことない方はぜひ、機会があったら一度実物をご覧ください。一度、恵比寿を描いた掛け軸を見たことがあるけど、おめでたい画題のはずなんだけど、パワがみなぎり過ぎて見事に恵比寿が内包する不穏な本質まであらわれてたからね。この恵比寿さんってのも、掘り下げるとすんごい不穏なものまで含んでるんだけど、その話をするとキリがないのでやめる。
このおさかなちゃんイイでしょう。たぶん広重メチャクチャ面白がってノリノリで描いてると思いますよ。おキャット様もそうだけど。たぶん動物大好き系の人だったのでは。楽しくてやってるとイイものができるんですよ。
しかし、帰ったら甚だしく疲れていまして、ああそうだ明日仕事なんだった。帰りに殿様と姫(姉のところの甥と姪)のプレデントの代金振り込んでポチ袋とお茶買ってこなくては。あと余力があれば聖地・立川でビックカメラでも寄ってブロアー買ってこよう。さすがにいつまでも眼鏡拭きでレンズ拭くのもねえ。
だが今日はもう限界だ。フートン敷いて、秘宝の里ちょっと行ったら寝よう。でないと死ぬ。
「三体」読み終わったので、次に行くぜ。すごかったけどネタバレはしない。気になる方は自分で確かめるのだ。