雑種犬肉球日記

雑種犬が書いたブログ。

久しぶりに自分のルーツの一つに再会した

ヨーチューブで「雲のように風のように」観ています。

酒見賢一先生のデビュー作「後宮小説」を、原作の要素を壊さぬまま見事に全年齢対象アニメにしてのけた名作です。

原作の小説は、王朝時代の中国の、どこかの時代の文献と後世の調査記録をもとに描いた稗史という体裁で書かれていて、曖昧に書かれている部分は「文献にはそこまでの細かい記録がないから」ということで、読者に想像させる余白がありますが、アニメは観ている人がキャラクターに共感できるよう、結構具体的に描かれております。

お話の基本はシンデレラストーリーですが、そこにもうひと捻り、更にどでかい変化球が仕込まれています。

華夏の文明華やかなりしどこかの時代。皇帝の崩御により、皇太子の花嫁を集め新たな後宮を作るために集められた娘たち。お妃教育を受ける娘たちの、寄宿舎で同室となった四人は、帝国の歴史に名を残すこととなった…。

ざっとお話しすると、まあこんな感じですね。

まずヒロインの銀河。陶芸師のお父ちゃんと暮らしていた、ど田舎出身のお子様ですが、天真爛漫で無邪気な女の子。親友の無口で飄々とした江葉、他の候補生を敵視していたものの、寄宿舎で暮らすうち段々と角が取れてくるツンデレな貴族のお嬢さんの世沙明。謎の多い美人で、相部屋四人組の中では一番お姉さんの玉遥樹。この四人に、謎の麗人・双槐樹、反乱軍の頭目・幻影達と渾沌、お妃教育のための教師・角先生、腹違いの息子である皇太子の命を狙う皇太后、宦官や士大夫などが絡み、皇太子の即位やお妃の位階が決まったと思ったら、そこから更にちゃぶ台返しの大波乱!

全寮制女学校ものの少女漫画的な前半から、後半は怒濤の戦国乱世な三國無双展開へ!

この凄まじい落差がたまらんです。

表面的には激動の時代の転換点を描いていますが、それと並走する如く、銀河と若い皇帝のもどかしくもかわいらしい恋の物語が綴られます。

終盤、士大夫は逃げ出し既に国の体をなさなくなった朝廷に対し、最後まで国を守るべく立ち上がり、先帝が西洋から輸入していた近代兵器で武装した後宮の妃たちが、銀河と参謀を務める江葉の指揮のもと、ひしめく美女に目が眩んだ反乱軍を返り討ちにします。その最中、武芸を修めなまじ腕が立つだけに狙い討ちにされ、玉遥樹は壮烈な戦死を遂げますが、原作はもっと悲惨な最期なんですよね…。

アニメは後宮の娘たちが、銀河と皇帝の絆に感じ入った渾沌が講じた策により解放され、それぞれの故郷へ帰るところで終わります。

原作では、終章「縦横」で玉遥樹を除く生き残った三人娘それぞれのその後が語られます。

まず、銀河はやっぱりど田舎の出身だった江葉の実家に身を寄せ、そこで出産。息子が手を離れると、親友と二人してあちこちへ旅に出て、そりゃもう自由奔放。その後、年頃になった息子は挙兵、中原を平定し、かつて父が治めていた都で皇帝に即位します。残るもう一人の世沙明は、お妃教育の過程で教えられた房中術を雇ったおんなのこに教えて妓楼を経営。なにせ第一線で実践学問を学んだ世沙明が直接教えているだけに、売れっ子揃いで妓楼は大流行り。晩年には酔うと銀河の話をしては懐かしんで「もう一度会えないもんかねえ」とため息をついていたようです。

なんかね、その後の世沙明のこのエピソード好きなんですよ。

祭りの後のような、もう絶対に戻りようがないと解っていればこその寂しさ懐かしさを感じさせますよね。

 

今振り返ると、この小説と出逢ったのが中学生の頃だから、もうにじゅ…ゲッホゲホベフッ。要は自分の土台というか核というか、そういうものを自分で作り始める時期に出逢ったわけです。

発表当時の評価で「シンデレラ+三国志金瓶梅ラストエンペラー」などと言われたそうですが、こんな強烈なものと出逢ってしまったら、そりゃあその後の嗜好に影響がないわけがないでしょう。

ということで、この小説とアニメもまた、私の根幹をなすものの一つとなっています。

アニメは全年齢向けとはいえ、さすがにテーマが今のご時世に再放送するのは難しいことが察せられて、もう観られないかと思っていましたが、まさかヨーチューブでエンディングの主題歌までおさめたフルバージョンがアップされて観られるとは! 外国の方がアップされているのか、英訳の字幕付きではありますが気にならなかったので無問題!

いい時代になったもんだ。

今まで「組曲ジャイアントロボ」が聴きたくなったときくらいしか繋いでなかったけど、コレのおかげでもう少しヨーチューブ利用が増えそうですよ。

芦辺拓先生がキッズステーションで配信していたのをご覧になったとツイートされていて、気になってググってみたらヨーチューブにアップされているのを見つけた次第。

なんか思わぬ発見したし、明日も仕事してこよう。何でもググったり調べたりしてみるもんですね。