仕事してきた。明日は休みですがね、それでもやることはあるんだ。
とにかく明日は朝のうちに起きなくてはいかん。接骨院に早く行っておかないと後が詰む。
洗濯はもうしたので、あとは早く起きるのみ。
「だってさ、兄弟」
「うむ、それならば管理人さんを起こして差し上げねばなるまい、であろう兄弟! 」
「そうだね! 僕らで起こしてあげようよ。管理人さん、最近目覚まし時計の様子がおかしいって言ってるしね」
「兄弟も兄弟もいいことを言う」
「それでは明日の日の出、6時に起こして差し上げようぞ! 」
「お日様と一緒に起きるって、清々しいよね兄弟! 」
「朝早く起きると飯がうまいんだ。しってる」
嫌な予感がする。
「待て待て堀川三兄弟」
「あ、鶴丸」
「鶴丸さん」
「鶴丸殿」
「いいか、管理人さんを起こすなら、目覚ましがわりに恋バナを聞かせることだ」
まだやってたんかそれ。
「こい? 庭の池で金魚と一緒に泳いでるな」
「洗いにするとおいしいんだよね」
「裏山の滝壺には鯉のヌシ殿がお住まいであるな。今年の夏には滝登りに挑戦したいとおっしゃっていた」
「あー、君らに色恋の話は無理か。それじゃあ、山の怪談でも聞かせてやったらどうだ。山籠りの間に体験したり聞いたりした話の一つもあるだろう」
朝っぱらから恐怖と戦慄で起こすつもりか。おい鶴この野郎。
「お、なんだなんだ、ご不満か? そんならおめざの朗読してやろう。何がいい? 」
もうなんでも好きにしろよ。
「そんなら『傀儡后』電波文パートいくか」
やめろ!
「それじゃあ筒井康隆の」
お、なんだ。時かけ?
「『驚愕の曠野』と『邪眼鳥』どっちがいい? 」
せめて「虚航船団」にしてくれ。
「こら、鶴さん、ダメだよあんまり意地悪なこと言っちゃ。鶴さんがごめんね」
どうだ。鶴丸、みっちゃんに起き抜けで聞かせるなら、何を読み聞かせる。
「光坊だったら、そりゃあグリム童話の中でもこう、ロマンチックなお姫様とか出てくるものをだな」
私との落差はなんなんだ。
「光坊はかわいいからな」
そんじゃあ、安達で付き合いがあったお髭ちゃんは何で起こしてやる?
「そんなもん、あいつなら『死都ゴモラ』で起こしてやるぜ」
腐れ縁感すげえなおい。
ということで、明日の朝に寝覚め最悪な起こされ方を回避しなくてはいかんので、程々で寝ようと思います。
明日は程々で起きる。つもり。